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釧路家庭裁判所 昭和32年(家イ)93号 審判 1958年7月22日

申立人 黒田ナオ(仮名)

相手方 山内友吉(仮名)

事件本人 山内弘子(仮名)

主文

本件申立を棄却する。

理由

申立人は事件本人の親権者を相手方より申立人に変更することの申立をなしその理由の要旨は事件本人は昭和二八年○月○日、申立人と相手方との間に生れた長女であるが、相手方は申立人に何等の相談もなく無断で離婚届をなし事件本人の親権者を相手方と指定したのである。申立人は相手方のとつた一方的な離婚に対し不満はあるが、現在相手方は既に他の女と結婚しているため同人とこの上共同生活を続ける勇気と自信もないから、離婚について非違を追及しないが、事件本人に対する親権者としての、義務を怠り、殊に相手方の後妻は常に虐待を続け甚しいのは、電気アイロンで臀部や両足に火傷を負わせる残虐非道な暴行さえ加え、実親として聞くに忍びず、心痛に堪えない。その後申立人は○○炭山の選炭婦として給料一万二、三千円を得て生活も安定したので、申立人において、引き取り養育するのが、事件本人の幸福と思われるから親権者変更の申立に及んだというのである。

申立人が昭和二七年○月○日相手方と結婚し翌二八年○月○日長女弘子を儲けたこと、しかるに昭和三二年○年○○日協議離婚し、親権者を父相手方と定めたことは相手方の戸籍謄本により認めることができる。もつとも離婚は相手方が申立人に無断にて届出でた一方的離婚だというのが申立人の主張であるが今日に於てはその違法を追及しないというからその正否について特に判断はしないが相手方が昭和三二年○月○○日佐藤芳子と結婚し翌三三年○月○○日長男勇が出生したことは、上記戸籍謄本と相手方の審問調書により明かである。しかし相手方が事件本人を虐めたりその後妻芳子が申立人主張のような暴行を加え或いは所謂継子いぢめをしている事実はこれを認めるに足る証拠は全くなく寧ろ相手方は自動車運転手として○○○○会社に勤務し、生活も安定し後妻芳子との間に長男勇が生れてからも家内円満にして事件本人を養育し本人もなついてることが、上記審問調書と調査官の参考人上田憲正、同高田茂郎に対する調査報告書を総合すれば窺えるばかりでなく、申立人は放浪癖ありこれ迄にも数回家出して家を顧みず現在所在不明の状態にあることは上記審問調書、調査報告書に徴し明かであるから到底子の教育監護を期待することはできないので、事件申立は理由なきものと認め棄却することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 原和雄)

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